中小企業がAIを入れるなら、社長が自分で触るところから始める。AI担当を置いて任せるのは、その後でいい。
どこにお金と人を張るかを決めるのは、社長だ。触ったことのないものに、お金と人を張れるか。張れない。AIで何ができるかを自分で分かっていない社長は、これからの会社のかじ取りができなくなる。
自分は滋賀で片付け・買取の会社カタクルをやっている。AIに指示を出してきた時間は、記録に残っている分だけで600時間を超えた。そこで分かったことを書く。
AI担当より先に、社長が触る
AI担当を置いた会社がうまくいかない理由を、自分は外から見て知っているわけではない。見たり聞いたりした会社の話もない。ただ、普通に考えて、社長がトップダウンでやらせた方が絶対に進む。
日本の会社は、上の人を見て動く。これは自分の感覚やけど、かなり強いと思っている。社長が毎日AIを触っていたら、社員も「触らなあかん」となる。社長が触っていないのに、担当者にだけ「やっといて」と言っても、周りは本気にならない。
社長が触っていれば、社員に触らせるのは簡単だ。自分のサブスクを配って、使わせたらいい。最初から全部使いこなせる人なんかいない。まず触る人を増やす。
ラクスルの2026年の調査でも、代表がAIを積極的に使っている会社で「方針も体制もない」は4.0%、代表がまったく使っていない会社では85.7%だった(ラクスルの調査・PR TIMES)。
かじを持っているのは、社長のまま
ほかの社長に一言で言うなら、こうなる。AIがどれだけすごいか、AIで何ができるかを自分で分かっていないと、意味がない。
これから会社のかじ取りをするのは社長だ。AIで何ができるかを知らない人が、どこに人を置いて、何を機械に任せるかを決められるか。決められない。担当者がどれだけ詳しくなっても、かじを持っているのは社長のままだ。
担当者が詳しくなるほど、社長との差は開く。社長は担当者の説明を聞いて、分かったような顔でうなずくしかなくなる。それでは、どこにお金と時間をかけるかを自分で決められない。
最初の仕事は、自分の役目を作ることだった
自分が最初にAIでやった仕事を、実は覚えていなかった。記録を見直すと、2026年4月の頭に、AIと一緒にカタクルのホームページを作り直していた。色を絞って、スマホで見やすくして、LINEと電話のボタンを置き直した。数日で公開して、検索で見つけてもらうための設定をして、地域ごとのページを3枚足した。その次は、手書きの間取り図を読み取って図面にする道具を作っていた。
そのとき何に困っていたかと聞かれると、何にも困っていなかった。困っていたのは、片付けの現場以外に自分のやることが無いことだった。だからAIで仕事を作った。役目を作った、という方が近い。
いまは、LINEで来た買取の相談から品物を書き出すのも、見積の点検も、AIに下書きさせている。体感で、自分の手でやっていた頃は1件に1時間、長いと2時間かかっていた。いまは20〜30分だ。
夜は、AIに仕事を渡して寝る。AIが直して、別のAIが見て、指摘が来たらまた直す。それを朝まで回す仕組みを入れてある。朝起きたら、仕事が進んでいる。寝ている間に会社が動いている感覚は、自分で触ってみないと分からない。
AIは「優秀やけど無能な部下」
うまくいかなかったことは、いっぱいある。いっぱいありすぎる。毎日うまくいっていないし、いまもうまくいっているとは思っていない。
分かりやすいのは、広告の文やキャッチコピーだ。AIに書かせると、どうしてもAIっぽい文になる。電話の最初のあいさつも、「機械っぽい」と言って話し言葉に直させた。このサイトの文も、何回も「AIっぽい」と言って書き直させている。
AIの上にもう1つAIを付けて、見張らせる仕組みも作っている。自分はメタハーネスと呼んでいる。これで失敗に気づけることは増えた。ただ、最後に「これでいい」と決める審美眼は、まだAIに移せない。いずれ移せるようにはなる。移せるというのは、最後の決定ができて、「ここ直して」と言えばすぐ直る、ということだ。
だから、優秀な部下ができたと思ったらいい。優秀やけど無能な部下だ。手は速いし、言ったことはやる。でも、何がいいかは決められない。そこは社長の仕事として残る。
もう1つ変わったのは、自分がやりたいことをどう言葉にするかを考えるようになったことだ。AIには、言葉にしたことしか伝わらない。ただ正直に言うと、最近はあまり考えられていない。「最近、俺考えれてないな」という感覚が、自分にはめっちゃある。
今夜1つだけやるなら、自分のことを渡す
AIを触ったことのない社長が今夜1つだけやるなら、見積書を作らせてみるのもいい。でも一番大事なのは、自分のコンテキストを渡すことだ。
コンテキストは、AIが仕事をするのに要る、自分の会社の事情のことだ。どんな会社で、何を売っていて、お客さんは誰で、見積はどういう考えで出しているか。これを知らないAIは、どこかで聞いたような答えしか返さない。渡すほど、自分の会社の答えが返ってくる。
やり方は難しくない。会社案内、過去の見積書を何枚か、お客さんからよく来る質問、自分が普段どう考えて値段を決めているか。手元にある紙やExcelを貼って、話すように書いて、「これがうちの会社や」と渡す。きれいにまとめなくていい。そのうえで、明日出す見積書を1枚作らせて、自分で直す。直したところが、次に渡すコンテキストになる。
渡したら、そこからスキルを作っていく。スキルは、AIに渡す仕事の手順書だ。見積の点検ならここを見る、買取の相談ならこう書き出す。うまくいったやり方を、1つずつ残していく。
最初の道具を、自社で作るか
なんで最初の道具はYUHITSUが作るのか。結局、その方が早いからだ。
たとえば、未来のゴールを先に決めて、そこから逆算して、要るTODOを全部出してくれるアプリがある。やり方としてはほんまにいい。
ただ、ああいう道具は自社ではすぐには作れないし、毎月の費用もかかる。カタクルでも契約はせず、足りないところは自前の仕組みで埋めると決めた。
自社で内製化するなら、こうした方がいい。その形を最初に作って渡すのが、YUHITSUの仕事だ。
ただ、別にYUHITSUが作らなくてもいい。作れるなら、自分で作ったらいい。大変やけど。
自分の会社で何から触るか決めかねている社長は、YUHITSUに話を聞いてみてください。最初の1つを決めるところから話します。